フリーランスはヒマなのだ

フリーランスのお友だち〜本・映画・テレビ・ネット

近所にコンビニは一軒もなくなってしまった。コンビニエントに使われ損なのかオーナーさんは

フリーランスとなっていつのまにか20年を超えました。
 
細々と足し算の仕事を積み重ねてきましたが、はてこの先、どうしたもんかいな。5年後10年後、いやいや、半年後だってどうなってるかわからないこの不安定さ。
 
てなことをフリーランス仲間が集まると、∞(無限)プチプチのように際限なくぼやきあっています。
そんなとき決まってこんなセリフをつぶやくヒトがいます。「ま、最悪はコンビニででも働くわ」
おいおいそんな簡単なもんじゃないぞ、コンビニ勤務は。
私には到底無理です。あんな複雑で難しい仕事、こんなつぶしの効かないオヤジにこなせるわけがありません。勤まりません。
 
高砂コンビニ奮闘記」という本があります。
高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-

高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-

 

 

作者は、10年近く出版界から干されている(と自ら言及)乱歩賞作家・森雅裕氏。ホームレス同然の生活から抜け出すため50代半ばにしてコンビニ店員へと。その体験記です。
いつかは我が身、との思いがそうさせたのか、なにげなく手にとった一冊でしたが、さすが小説家!だけあって、その文章力、表現力の巧さに一気読みです。
 
 
それにしても不覚でした。
コンビニといえば、夕方や日曜には、高校生がレジ打ってるし、平日の昼間はおばちゃんが「らっしゃい!」と元気いいし、最近では胸の名札に、「り」とか「ちょう」とか「そ」とか「かん」などという名前の人が多いから誰でも(ゴメンなさい)できるお手軽なバイトのイメージを持っていました。お詫び申し上げます。まったくの誤解でした。反省しています。
 
 
商品のレジ操作の合間に、消費期限チェック、品出し、雑誌の返本、ファーストフードの調理、厨房機器の掃除殺菌、公共料金などの収納にレジ点検と、やるべき仕事は盛りだくさん。
 
厄介でわがままでやんちゃな客やクレーマーの波状攻撃にも平身低頭専守防衛で臨まくてはならない辛さ。
本部から見下され、客からも見下され、一個の人間としての尊厳やプライドがズタズタに踏みにじられる複雑な人間関係など、肉体的にも精神的にも休まることのない過酷な労働環境がこの本にはたっぷりと描かれています。
 
 
おもしろいところは、ただ単なる暴露的なコンビニ裏話に終わっていないところ。
10年ぶりの出版といえども、さすがに乱歩賞作家。その手にかかると、コンビニという舞台がいきいきと輝いてきます。アルバイト、客、本部やオーナーなどの多彩な登場人物が織りなす悲喜こもごものドラマはまったく飽きさせません。
24時間365日絶えることなく煌々と輝く蛍光灯の灯りのなかにうごめく、不条理、格差、孤独、異常、非情、攻防、裏切り…コンビニ、そこはまさに「現代の縮図」そのもの。
 
 
 
本書のラストにこんな箇所がありました。
 
最近までここにあったはずのMニップ西×岩店も閉店していた。コンビニに勝者なし、の感がある。この西×岩店は自家製惣菜なども工夫しており、特に経営不振ともみえなかったが、高砂、小岩と近隣のMニップが立て続けにつぶれるというのはどういうことなのか。そんな中で新店舗を出すというのはどういうことなのか。
繰り返す。私たちは何のために歴史を学ぶのか。教科書に載っていることだけが歴史ではない。

 

 

 

ウチから歩いて3〜4分のところに「セブンイレブン」と「サークルK」があったのに、最近2軒ともほぼ同じ時期になくなっちゃった。

 

 

脱サラして人生やり直すぞ、と夢見るオーナーがそこにいた。
しかし思ったように売上は伸びない。本部からはつつかれ、バイトから冷たい目で見られ、集まる客はわがままで乱暴で、それでもお客さまだから我慢我慢を強いられ、やがてそれらがストレスとなり、肉体と精神をむしばみ、疲れ果て、店舗を立て直す気力も体力も失い、夢の結晶は風化し、取り壊され、残るはオーナーの借金だけ、というはかなさ。
本部は、夢見るどこかのオーナーの失敗なんて気にもしない。また再び新たなオーナーを見つけ出し、新たな店舗を堂々とオープンすればいいだけの話なのだ。反省しているヒマがあれば、次なる出店だぁ、か。
 
よく通ったあのコンビニの、オーナーらしきおじさん、今どうしてるの?
 
 
 
 
 
世の中には2種類の人がいるといいます。お金を奪う人と奪われる人。
 
大きなお金を奪うことができず、もがき続けている人が、数百円せいぜい数千円というお金を払うことで、「おれは客だぞ」と唯一優位に立てる場所、それがコンビニ。
 
直接対するのは一アルバイトに過ぎなくても、その背後にある大手コンビニの名前に、数百円で大きな顔ができる優越感があるんだろうな。でもね、ほんの数百円数千円でいばっても誰も尊敬なんかしてくれないよ。虚しいだけですから。

 

コンビニ人間

コンビニ人間