善良なる横道世之介に再び出会えた喜び

1ページ1ページがなんとも愛おしくて、いつまでも主人公に寄り添いたくなる小説があります。
前作から10年ぶりの続編「続 横道世之介」(吉田修一
 
 
前作の結末に衝撃を受け、でも「ああ、世之介らしいな」と納得したものですが、続編ではこれまた見事に世之介の「善良」が描かれています。
 
この続編の舞台は1990年代はじめなのですが、ところがどっこい2020年東京オリンピックパラリンピックの出来事が随所に登場します。
実は2020年の物語のなかで、主人公・世之介はすでに存在していません。
 
でも<なぜか>オリンピック・パラリンピックに関わる人たちのなかで、確実に横道世之介は生きています。
 
 
不思議な物語です。
主人公は、題名通り「横道世之介」なのですが、実際には「横道世之介と出会った人たちの物語」なんです。
 
作中、世之介のことを「善良」と称しています。
「ただ善良であることの奇跡」と称しています。
世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない。とも。
 
つまり「善良」なるものと出会った人たちが、「善良」と関わることで、その後、どう生きるか、どう生きていけるかが描かれた小説です。
 
 
前作「横道世之介」は映画にもなっています。(監督:沖田修一
この映画もまたすばらしい。
世之介を演じたのは高良健吾で、続編を読んでいる間ずっと高良健吾の顔・姿が浮かんできて仕方ありませんでした。
 
接する順番は、前作「横道世之介」→映画版「横道世之介」→そして「続 横道世之介」がいいかな。10連休のおすすめです。
新しい時代「令和」を、気持ちよく迎えられること、まちがいありません。

 

横道世之介 (文春文庫)

横道世之介 (文春文庫)

 
続 横道世之介

続 横道世之介

 
横道世之介

横道世之介