苦しいことは先送り 楽しいことは先延ばし〜病院ラジオのガンズ少年

先送りっていうとどうも消極的で無責任さを感じます。
今やるべきこと、今必要なことを、 
あーメンドくさ、やりたくねえ、と遠ざけることですから。
 

同じような意味の言葉で、先延ばし、ってのがあります
でもね、なんとなく先延ばしは、 
先送りよりもポジティブで前向きな感じがします。 
しませんか。 
このふたつ、どう使いわけてます?

 

NHKの番組で「病院ラジオ」というのがあります。
サンドウィッチマンがいろいろな病院で出張ラジオ局を開設し、
患者さんやスタッフを迎えて話を聞き、リクエスト曲に応えるやつです。不定期ですが放送があれば毎回録画してかならず見ます。

先日の放送は、長野県にある長野県立こども病院でした。
難病、がん、アレルギーなどの疾患を持つ子どもたちが入院通院しているようです。

病気と闘う何人かの子どもたちが登場し、
そのなかに、ガンズ・アンド・ローゼズのTシャツを着た
中学生の男の子がいました。


彼は血液のがんに侵されています。
治療を続けるなか、一度病気にとどめをさすという大きな治療をし、
そのあと無菌室でしばらく闘病を続けました。
無菌室は真っ白で、でも、ところどころ壁が剥がれていて、
それがまた孤独をつのらせてしまう、と語っています。


そうした日々のなか、
彼は音楽を聴くことと日記を書くことを楽しみにしていました。


彼の食べたいものリストには小さい字で書かれた
いっぱいの料理が並んでいます。
テレビで見ているとみんな美味しそうに見えちゃうと。

そうした日が続くなか、彼はこう思うのです。

「先延ばしにしたほうがすごい楽しい」
「その先に楽しいことがあるなって思えば別にいくらでも耐えれる」
「そのつらい日がたまって、どんどんたまってから、そのうれしい日が来た時がすごい楽しくて」


辞書には
先送りも先延ばしも、
その時点で判断や処理をしないで,先に延ばすこと。
すぐやるべきことや予定していたことを先へ延ばすこと。
と書いてあります。どちらも後ろ向きです。


でも、彼の中での先延ばしは、
その先にあるだろう楽しみのためへの一時停止。

口の中に入れた甘いキャンディをゆっくりとやさしく時間をかけて舐め、楽しみへの助走である先延ばしを味わっています。


彼の部屋には、時々清掃のため、おじさんが訪れるそうです。
おじさんは部屋に飾ってるビートルズのポスターを見て、
ビートルズ好きなんだ」と言い、
次に清掃に訪れたときに、EPレコードをプレゼントしてくれたそうです。


「病院ラジオ」は最後にリクエストを尋ねます。
彼のリクエストは、ビートルズの「In My Life」でした。
ジョン・レノンが故郷やそこで出会った人との思い出を綴った、
過去を振り返る歌です。

でも彼には、これからの人生で出会う人々への期待や夢や、
そして新たに築き始めるであろう思い出の歌に響いたのでしょう。

これまで何度も何度も聴いたはずの「In My Life」
この時の「In My Life」ほど、
詞の意味と調べが染みた「In My Life」はありませんでした。

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おじさんがプレゼントしてくれたビートルズ
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たぶんその清掃のおじさん
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