新海誠は100パーセントの女の子を見つけたか

君の名は。」を観終わった後、なんか引っかかるものがあって、その正体はなんだろうと記憶の端っこを探してみたら、ああ、ありました。
 
 
村上春樹の初期の短編に「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」というのがあります。
 
100%の恋人同士が、本当にお互い100%だったならば、再び何処かで巡り会えるに違いない試してみようと一旦別れます。ところが別々に暮らしている間に悪性のインフルエンザにかかり二人は記憶喪失になってしまいます。何十年か後、二人は互いの記憶がないまま偶然原宿ですれ違うという話です。

 

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

 
「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

 

 

新海誠の作品って、その多くが村上春樹のこの「100パーセントの女の子」がベースにあるんじゃないかな。
 
 
2007年の「秒速5センチメートル」は、記憶喪失ではないけれど、山崎まさよしの、~いつでも探しているよどこかで君の姿を~命が繰り返すならば何度も君のもとへ~の「One more time ,One more chance」がテーマ曲であるように、出会えそうで出会えない二人が描かれています。
 

 
 
2014年の「クロスロード」(Z会の120秒コマーシャル)は、東京と離島に暮らす全く接点ない高校生の男女の生活が交互に描かれます。まさに「君の名は。」の構図そのものです。
(この120秒コマーシャルのコマーシャルとして見事なところは、自身の一貫したテーマをZ会の添削採点者にセリフで言わせているところです。つまりこの不思議な世界に隠された素晴らしきところをクライアントに語らせ、花を持たせている点です)
 
「クロスロード」は120秒なので別々の生活をする二人が出会うのはラスト一瞬ですが、互いが100パーセントであることの予感を示しています。
 

 
 
 
新海誠は、こうやって100パーセントの女の子的な世界を描き続けてきて、ついに「君の名は。」で、エンタテインメント(商業映画)の形を借りてすべての落とし前をつけたのでは、と思うのです。(落とし前つけたのかどうなのかは、次どんなテーマで映画を作るのかでわかります。)
 
 
君の名は。」は、よくよく突き詰めてみると疑問や矛盾がいっぱいです。
それでも、映像のキレイさと音楽の良さと、そしてそして「みんな大好き運命」の力によって最後まで強引に突っ走って一気に感情を高めてくれています。
 
 
ヒットの理由はひとつじゃないと思うけれど、やはりどこかしら理屈じゃない運命的なものの存在~<今はまだ><でもいつか><どこかで誰かが><ひょっとして記憶にないだけですでに><きっとわたしにも100パーセントが>~が多く人の心に響いちゃったからじゃないかと、おじさんは思うのです。