フィギュアスケートにおける名古屋との親密にして曖昧な共通点
平昌冬季五輪までまもなく。
フィギュアスケートの代表がやっと決まりましたね。
かつての代表選手ほどではないですが、今回の代表にも「フィギュアスケートにおける名古屋との親密にして曖昧な共通点」なるものがやはり存在していました。
古くは伊藤みどりに始まり、安藤美姫、恩田美栄、中野友加里、そして浅田舞・真央姉妹、さらには小塚崇彦、村上佳菜子、鈴木明子、宇野昌磨、そして今回ペア代表となった須崎海羽、木原龍一……すべての人に共通する、あるモノ…
そう、「名古屋」および「愛知」という土地であります。
名古屋で生まれ育った私は、スケートの季節になり、彼らの活躍を目にし耳にする度に、深く郷土愛なるものに震えます。
しかしここで多くの人には当然の疑問が浮かぶことでしょう。雪国でもないのになぜ名古屋ばかりが?
名古屋には、秘密の訓練場、虎の穴的なものがある?なんてことはありません。(と思います)
至極単純で分かりやすく、多くの人に納得いただける理由が、実は、あるのです。
その答えは、言語、つまり名古屋弁なのです。
フィギュアといえば、銀盤を「舞う」競技。
「舞う」‥そう、ひらがなで書くと「まう」
名古屋の方々は、よく「まう」という言葉を使用します。
この「まう」は、「~する」「~(して)もらう」という言葉として用いるのが一般的です。
いくつか例を挙げてみましょう。
「あまりにも面白くて笑う」は、「どえらけにゃあ面白いで笑ってまう」に。
「飲み過ぎて吐く」は、「どえりゃあ飲んだもんで吐いてまう」に。
「自転車のカゴにカバン入れておくと、ひったくりに盗られるよ」は、
「ケッタマシンのカゴにカバン入れとくと、ひったくりに盗られてまうよ」に。
ちなみに、「まう」は、「まい」と変化し、「~しようよ」という意味でも用います。
「デートしよう」は、「デートしよまい」
「確定申告をする」は、「還付金もらおまい」
「もうこれ飽きた」は、「コメ兵へもってこまい」(超意訳です)
となります。
しかし、私たちNatural Born Nagoyanにとってなじみのあるコトバ「まう」も、名古屋人以外の人が耳にすると、混乱が生じるようです。こんなふうに解釈され、よくつっこまれます。
「泣いてまう」は、「泣きながら舞うんかい」と驚かれ、
「盗られてまう」は、「盗られて踊るんかい」と、あきれられ、
さらに、「吐いてまう」は、「吐きながら舞いを踊ると吐いたモノが自分に振りかかってくるではないか」、と心配してくれながらも、冷ややか視線を投げかけてきます。
生まれたときから「まう」が身近にあり、学校でも家庭でも近所でも一日数回は「まう」と接してきた名古屋弁ネイティブは、この混乱を理解できません。
なぜなら、「まう」は「まう」以外の何ものでもないからです。
「まう」は友だち。
「まう」家族。
「まう」はエアロ、いや、ペット。
そう、名古屋人にとって「まう」は、現代若者にとってのLINEと同じ程、欠かせないものといえるのです。
それほどまでに「まう」と一体化した名古屋人が、自由に華麗に優雅に銀盤を「舞う」ことになんの不思議が、なんの抵抗があるでしょうか。当たり前といえば、当たり前のことなのです。
染み付いた「まう」は、その人を自然と「舞わせる」ことができます。
「まう」が染み付いた人は、選ばれた「舞う」人なのです。
名古屋が「舞う」競技であるフィギュアスケーターを多く輩出していることが、これでお分かりいただけたかと思います。
浅田真央選手のお姉さんは、名前そのものが「舞」。きっとご両親の思いが込められて命名されたことでしょう。しかし悲しいことに、妹の真央さんの方が……ネイティブ度が高かったのでしょう。
全国のフィギュアで頂点を目指す若人たちよ。
テクニックを磨き、表現力を身につけ、精進することはもちろん大切ですが、悲しいかなそれは表面上の成長しかもたらしません。
いくら英語を勉強しても、「L」と「R」の発音ができない。そのもどかしさと同じなのです。
あきらめることはない。今からでもネイティブを目指せ!
そのためにはまず、朝起きたらまず、「舞う」の下二段活用を連呼することから始めましょう。
舞え 舞え 舞う 舞うる 舞うれ 舞えよ
失礼しました。
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