有名すぎる仕掛けなので今さらなのかもしれませんが、ある空港の男子トイレで汁の飛び散りが激しいため、便器に「炎」や「ハエ」のシールを貼ったら、男性陣はそれをめがけて用を足すため、飛び散りが減ったとか。
コンビニレジ前の足跡マークだってなにも言われなくとも自然とそこに並んでしまう。
「やれ!」とか言われなくてもお金をもらわなくても人の行動は「工夫」や「仕掛け」で思い通りになってしまう不思議さ面白さ。
無意識に働きかける仕掛けや行動経済学はおもしろい。
そんな興味が尽きない時、こんな話を聞きました。
仕事で付き合いのある、ある撮影技術会社の話です。
その会社は大通り沿いにあり、駐車場は社屋前にスペースがあるわけではなく、一台ずつ縦に入れなくてはいけません。しかもバックで。
大通りだから他の車の流れが途切れた時にバックで入れるわけですが、それ以外にも厄介なのは、車庫の斜め前にバス停があるということ。
通常バス停でバスを待つとき、なぜか人はバスの進行方向と同じ方角を見て並びます。バス停を先頭に行列ができると、この会社の場合、完全に駐車場の出入り口が塞がれてしまいます。
そんなバス待ち列が出来ている時に、車を出し入れするのは大変です。
バス待ちの人たちに毎回「すんませんすんません」と声かけながら出し入れするわけですから。
いつもいつもバス待ちの人からは「なんだよ」「うっとうしいな」と白い目で見られていて、時にクレームさえ投げかけられていたとか。
会社側もなんとかならないか、バス利用者からもなんとかならないか、の無言の戦いが数年続いたそうです。
しかしある日突然、バス待ちの列が変わったのです。
今まではバス停を先頭にバスと同じ進行方向に並んでいた人たちが、まったく逆に列を作るようになったのです。
そうして、その会社の駐車場は人の列で塞がれることがなくなり、誰にも迷惑をかけることなく出入りができるようになりました。とさ。
しかしなぜだ?
その会社の人もその理由がわからないと言います。交通局がなんらかの働きかけをしたのか、それともそう並ばざるを得ない「工夫」や「仕掛け」をバス停のどこかに設けたのか。
これは話を聞いただけで現場を見ていないので私はわかりません。一度現場に出向き、なんらかの手がかりを探さなくてはと思っています。
今までずっとバスと同じ進行方向に向いて並んでいた人(一人じゃなく複数)を、当たり前のように逆に並ばせるなんてどうやったらできるのか。
これは非常に不思議です。不思議でかつ興味ありありです。
一番目に並ぶ人がどっちを向くか、二番目の人がそれに従うかどうか。
三番目以降は前にならえ、だから無視してもいい。
一番目のあなた、二番目のあなた、に聞きたい。なにがきっかけで並びを変えたのか。
あなたの行動を変えたのはなにか?
でも、毎回同じ人とは限らない。同じ人ではないけれど、「ああ、ここのバス停はこっちに並ぶんだな」と思わせる<なにか>がそこに仕組まれているのか。
ああ、知りたい。
これを知ることでいろいろなことに応用ができる。
命令や指示や報酬なんかなくとも人を動かすなんて、これは学んでおくと便利で役立つ。

- 作者: リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン,遠藤真美
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2009/07/09
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 365回
- この商品を含むブログ (97件) を見る