「世にも奇妙な物語〜あなた、同意しましたよね」〜授業で見せたい『クローズアップ現代+ 水増しインフルエンサー』

小さな花屋を営むAさんは、店の宣伝のためにインスタをはじめました。
フォロワーを増やすために、興味を持ってくれそうな人・店・有名人などを次々とフォローし、フォローバックによるフォロワーを増やしていきました。
 
でも際立った特長もないふつうの花屋で、しかもインスタ映えする商品もないため、フォロワー数は頭打ちです。
 
ま、こんなもんか。地道にやっていくしかないな。
 
始めた当初に比べ、アプリを開く回数も徐々に減っていきました。
 
そんなある日、久しぶりにインスタを開いて、Aさんは驚きました。
知らないうちにフォロー数が増えていたのです。フォロワー数ではなくフォロー数です。
 
なんだこれ。こんなにフォローした覚えないぞ。
なかには遠い異国の人や顔写真のない人、投稿さえしていない人もいます。
 
Aさんは気持ち悪くなって手動でフォローを解除していきますが、解除するそばからさらにフォローが増えていくのです。
 
どんどんどんどんどんどんと。
 
いつしかフォロワー100人に対して、フォロー数はインスタ人口に該当する10億人に達してしまいました。
 
 
世にも奇妙な物語〜あなた、同意しましたよね」
 
  
 
おそろしいですね。
先日見た「クローズアップ現代+」の<追跡!ネット広告の闇 水増インフルエンサー>を「世にも奇妙な物語」風に物語化するとこういうことでしょうか。
 
 
番組(Web記事の方が詳しい)では、フォロワー数購入による不可思議を取材・検証していました。
 
 
 
NHK取材班が、実験的に3つのアカウントを開設します。
それぞれのアカウントで1万人のフォロワーを購入します。
数時間から数日の間でどのアカウントもフォロワーが1万人に達しました。
 
 
さてここからがおもしろい、というかおそろしい。
その1万人はどういう人たちなのか。追跡取材のはじまりです。
 
 
外国名のフォロワーが多いなか、数は少ないですが日本人の、日本語のアカウントもあり、なかには実在する店や会社も含まれています。
取材班は連絡が取れたそのひとつ、あるケーキ店を訪ねます。
 
 
 
「このアカウントはこのお店ですか」
「はい、でも、フォローをした覚えがありません」
 
フォローをしたわけでもないのに、フォローしている?
 
 
 
しかもこのお店では不可思議なことが起きていたのです。
 
なぜかフォローが増えている。
フォロワーではなく、自らの能動的な行為によってしか増やせないフォローが増えていると。
お店の人は気持ち悪くて、そうしたフォローを手動で解除をしているそうです。
 
 
なぜ?なにゆえに?自分が知らないところでなにが起きているのか?
これこそ世にも奇妙な物語です。
 
 
 
このお店のようになぜだかフォローが増えているアカウントは他にもあるらしく、調べてみると、ある共通点がありました。
 
 
それはある海外ソフトを使っていること。
パソコンからインスタに写真を投稿できるようにするソフト。
 
 
長々と続く利用規約の1文にこんなのがありました。
 
 
Commit a follow to another user with your account
あなたのアカウントで他人をフォローする場合があります
 
 
 
 
 
 
 
 
自分も一応インスタのアカウントを持ってはいますが、思い出した時にちょいと写真をアップする程度の利用だから、フォロー数もフォロワー数も平日昼間の名古屋市営地下鉄名城線の乗員数程度しかありません。
 
でもちらちらと眺める他のアカウントで、大した投稿していないのになんでこんなにフォロワー数いるの?ってのがあったりします。
 
また、ときおり自分のアカウントを遠く離れた北海道や九州のラーメン屋・美容院・不動産屋とかがフォローしてくることもあります。
 
不思議だなあ〜と思っていましたが、それってこういうこと?となんとなく納得したりして。
 
 
 
 
 
インターネットはホントに便利で、もういまさら<無しにして>生活することができないインフラです。
次々と新しく便利なアプリやサービスが登場してきて、それによる効率とか時短とかは、なかった時代と比べようもなく進んでいます。
 
その便利さを享受するために、疑いもなくいとも簡単に「同意しますか」に「はい」と答えていたことに改めて気づき、いまドキッとしています。
 
幸いにも今のところ「世にも奇妙な物語」的なことは起きていないから大丈夫かと思いけれど、利用規約のトラップは簡単には見抜けない。
というか、気づかない。気にもしない。だからコワイ。
 
 
 
 
イギリスでは、あるWi-Fi利用規約内に
【(あなたは)第一子を永久にわれわれの手に委ねることに同意しますか】という項目が含まれていたのにも関わらず、短時間のうちにで何人もが「同意する」を選んでしまったといいます。これは実験として行われました。
 
 

また、ある海外のソフトウエア会社は、利用規約のなかに、1000ドル(10万円弱)の賞金がもらえますよ、という文章を含ませてテストしてみたそうです。

賞金1000ドルを要求する連絡があったのは、発売から5ヶ月も経ってからで、すでに3000本以上のソフトが売れた後だったといいます。

 

 

 

 

だから利用規約は必ず読まなくてはいけない。

 

なーんてのは非現実的です。

 

分かってはいるけれど現実には読みはしない。

大丈夫だろう、と思いこんでスルーして「同意します」にチェックです。

信用してではなく、思いこんで、です。

 

 

巧みに仕組まれたトラップに引っかかり、なにかが起きた時、多分決まってこういうんでしょうね。

 

「そんなの聞いてない」「そんなの知らない」

 
 
 
 
ネットリテラシーとかいうけれど、なかなかにそれをしっかりと意識して習得するのはむずかしい。
最終的には、もう本能的な勘みたいな部分に頼るところがあります。
 
 
こんな投稿内容でこんなフォロワー数はおかしいぞ。
フォロー数とフォロワー数のバランスに違和感あるぞ。
あまりに便利すぎて無料のソフトはきっと別でなにか吸い取ろうとしているぞ。
 
 
数=信用
であることを疑わず条件反射的に乗っかってしまうといろいろと厄介なことが起こってしまって大変です。
 
手動でフォローを解除したり、
乗っ取られたようなのでクリックしないでください、とみんなに知らせたり、
IDとパスワードを設定し直したりと、
やらなくてもいいことをやらざるを得なくなり面倒くさくてたまりません。
 
 
ホントに便利だけれども、その裏側には<闇>があるかもしれないことを常に意識しなくちゃいけませんね。
 
この番組とWeb記事は授業で見せてほしい。
 
 
 *追記:どうやら「Gramblr」らしい。
 

www3.nhk.or.jp

 

シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~

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