彼女が招待された意味を考えることが私たちのできること

思わず見てしまった「即位礼正殿の儀」
 
この儀に各国要人とともに皇室から招かれ参列した唯一の高校生がいます。
2018年6月沖縄全戦没者追悼式で「平和の詩 生きる」を朗読した相良倫子さん(当時中学生)です。
 
 
 
あの時ニュースで聴いた相良さんの朗読は衝撃でした。
内容の素晴らしさはもちろん、原稿を一切見ずにしっかりと参列者に目線を送りながら語る、その姿に釘付けになった記憶があります。
思わず全文をコピペして保存してしまった。
 
 
朗読前段は現在この地で生きている喜びを語りながら、73年前起きてしまった出来事の描写へと移ります。
 
前段の言葉と対比させながら語られる73年前の出来事は、言葉の選択がリアルで、どれだけの経験者に取材をし、聞き取ったことかと容易に想像ができます。
 
続いて相良さんは、当時生きていた人々へ思いを馳せ、生きることの素晴らしさを丁寧な言葉で綴っていきます。
 
後半の言葉はシンプルだけど美しく、ストレートの心に飛び込んできます。
 
全体で7分近くあるのに、相良さんは一切手元の原稿に目を落としません。
下を向いて原稿だけを読んでいるどこかの大人とは雲泥の差です。
 
 
今日改めて聞き返してみて読み返してみて、ホントすばらしい詩であることを再確認しました。
 
 
 
 
今回彼女が招待された意味を考えるのはとても重要な気がします。
天皇陛下ご自身の要請なのか皇室の要請なのかはわかりませんが、たしかに彼女は招待されました。
 
外国の要人とか国民栄誉賞とかなら基準が明確なので分かりやすいです。
でも沖縄に住むひとりの高校生を招待する、となると、そんな簡単なことではないような気もします。
 
 
1年前に朗読をお聞きになられて強く印象に残っている。だからぜひ!
そんなふうに誰かが強く熱望し推薦しない限りありえないことに思えるのです。
 
 
 
で、その誰かが「誰」なのか。
 
 
 
そこに秘められた意志や願いを、ある意味<忖度>して感じ取り、これからもしかすると起きるかもしれないいろいろなことを選択し行動していくことが必要なのかもしれない、と。
 
 
 
 
以下、当時コピペした相良倫子さんの「平和の詩 生きる」の全文です。
 
 
私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻孔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
 
私は今、生きている。
 
私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶(いなな)き、
小川のせせらぎ、
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。
 
私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。
 
ありったけの私の感覚器で、感受性で、
島を感じる。心がじわりと熱くなる。
 
私はこの瞬間を、生きている。
 
この瞬間の素晴らしさが
この瞬間の愛おしさが
今と言う安らぎとなり
私の中に広がりゆく。
 
たまらなく込み上げるこの気持ちを
どう表現しよう。
大切な今よ
かけがえのない今よ
私の生きる、この今よ。
 
七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、
光り輝いていた海の水面は、
戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、
燃えつくされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。
魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。
阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。
 
みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
 
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
私は手を強く握り、誓う。
奪われた命に想いを馳せて、
心から、誓う。
 
私が生きている限り、
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないこと。
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、
あらゆる利害を越えて、平和である世界を目指すこと。
生きる事、命を大切にできることを、
誰からも侵されない世界を創ること。
平和を創造する努力を、厭わないことを。
 
あなたも、感じるだろう。
この島の美しさを。
あなたも、知っているだろう。
この島の悲しみを。
そして、あなたも、
私と同じこの瞬間(とき)を
一緒に生きているのだ。
 
今を一緒に、生きているのだ。
 
だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
 
私は、今を生きている。
みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。
一日一日を大切に。
平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、
この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。
 
大好きな、私の島。
誇り高き、みんなの島。
そして、この島に生きる、すべての命。
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。
 
これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。
真の平和を発進しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。
 
摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。
 

 

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