毎日15分、10月から録り続けている「スカーレット」で、HDDが満タンになりつつあります。そろそろDVDにコピーしなくては、と、その前にもう一度頭から観てみよっと。
毎日15分でもそのおもしろさは痛感していましたが、一週間ずつ再び振り返ると改めて「スカーレット」の見事さが浮かび上がってきています。
う〜ん、これは傑作だぁ。
6ヶ月という時間を念頭に練り込まれている脚本の緻密さ、
各キャラクター造形の見事さ、
あのセリフ、あのエピソードが<ここ>に活かされているんだという再発見、
そして散りばめられたいくつかの出会いやエピソードがきれいなまでに主人公の成長のきっかけとなるよう用意されていて、それらがごく自然に物語を前へ前へ進めていく推進力となっていて、恐るべき脚本です。
惚れ惚れします。
なかでも貴美子役の戸田恵梨香がすばらしい。
戸田恵梨香って「デスノート」と「流星の絆」と「SPEC」と「阪急電車」ぐらししか知らなかったけれど、脚本の読み込み度の深さと、それを肉体と表情とセリフのトーンによって表現する演技力の巧みさ。こんなに綿密に計算して演技する人だったんだ。
しかも、ユーモアのセンスも抜群。
もちろん戸田恵梨香だけでなく、登場するすべての人物が生き生きとしている。
全員を好きになる。
全員を好きにならざるを得ないように脚本に書かれている。
表向きのセリフだけでなく、心の奥に隠れている感情も感じさせるような二面性のあるセリフがあふれている。
その裏を掴み取って表現できる役者が揃っている。
だからセリフではごく普通のことを喋っていても、そのセリフの奥にある真の思いを感じ取って視聴者はすべての人物を好きにならざるを得なくなる。
そして、感情のスイッチがところどころに散りばめられている。
だから見ていると
あ、いまこの瞬間心が動いたな。
いま、あのエピソードがよみがえったな。
あの経験があるから、いま泣いた、笑った、怒ったなどの心の変化が伝わってくる。
さらには、登場人物がドラマの中では知ることのできないエピソードを、視聴者にしかわからない方法で同時に並べることで、人物たちの感情の動きがわかりやすくなっている。
そのひとつが、例えば、八郎がお米のために売ってしまった深野心仙(フカ先生)の絵のエピソード。
その話を、八郎から聞いたフカ先生は改めて描いて八郎に渡す。
同時に貴美子は貴美子で、想像した絵を描いて八郎に渡す。
フカ先生は貴美子も描いたということを知らない。
貴美子もフカ先生が描いたということを知らない。
八郎が同時に二人から絵をもらったということは視聴者しかわからない。
そんな視聴者にしかわからないシーンがいくつかあって、俯瞰的に主人公は自分の人生時間しか知ることができなくとも、視聴者は主人公の時間以外を同時に知ることができるので、展開には納得感しかない。
すべてが影響しあっていることを多面的に描いている、見事な脚本です。
そしてそしてくどいようですが、その脚本を見事なまでに読み解いている戸田恵梨香の読解力。
「スカーレット」公式サイトにあるブログの「今週のきみちゃん」を順に読んでいくと震えます。
自分が演じる貴美子だけでなく、登場する人物ほとんどすべての造形・キャラを見事に語っています。
同時に、絡み合う感情の変化もまた分析していて、真に優れた役者とはこういう人のことをいうのだと確信しました。
この人は将来創り手の道へ進む人ではないのかと予感さえ感じます。