無力?ならば、医療の邪魔をしないこと。

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私は感染症隔離経験者です。
 
20年ほど前、指定感染症(当時は法定伝染病)3類である細菌性赤痢インドネシアから持ち帰ってしまったため、14日間強制隔離されました。
 
咳や発熱はなかったのですが、入り口から出口まで寄り道を許さない直行便(「びん」ではなく「べん」と読む>)がキツかった。
 
いかに出口を封鎖するかだけを考えていたインドネシアから日本までの直行便(「べん」ではなく「びん」と読む)もキツかった。
 
 
 
まさか自分が感染症に…罹るなんて。
 
安易に決めたパスワードがいつのまにか盗まれていたような、そんな不注意の大当たりでした。
 
 
自宅はもちろん、帰国後立ち寄った先はすべて申告させられ、消毒となりました。
 
隔離病棟へは裏口から専用エレベータで入りました。
 
隔離一週目は、病室から一切外へ出ることが許されませんでした。
 
2週目に入り、病室を出てフロア内だけを歩き回ることが許されてはじめて、ああ、ここが隔離病棟かと、自分がいる場所を眺めることができました。
 
正確に数えたわけではないので確かではないですが、病室は10〜15ほどあったのではないかと思います。
 
病室にこもっているからなのか、それとも他に患者がいないのか、フロア全体はとても静かでした。
そんなに感染症なんてないよな、ここが埋まることなんてないよな、余裕のフロアだなぁと、そんな呑気な時代でした。
 
 
あの静かだった隔離病棟も、今はおそらく満床なんでしょう。
医療従事者のみなさんは、とてつもない緊張と不安のなかで毎日新型コロナと向き合っているのでしょう。
 
 
感染症は厄介です。面倒です。辛く苦しいです。
 
自分が罹患した赤痢はまだ楽でした。
自分一人だけの隔離だったから、医療従事者への申し訳無さもほとんど感じることはありませんでした。
でもいまは絶対に新型コロナに感染してはいけない。感染させてはいけない。そう感じています。
ホントに今、医療現場は大変なようです。
 
 
 
そんななか、テレビのインタビューで、パチンコ店に並ぶ人はこう答えていました。
「感染するのはオレだから、自分の体がどうなってもかまわん」
 
 
外出自粛のなか、繁華街でこう答える人もいました。
「自分は罹らない気がする」
 
 
3月の終わりに政治勉強会を開いた某政党幹事長は講演でこう言っていたそうです。
「好き嫌い言わずにご飯食べて、睡眠さえしておけば少々のことには勝ち抜くように人間の身体はできているんです」
 
 
 
自分が感染するかどうかを言っていられる段階はとうに過ぎています。
 
 
私には医療に関する知識や技術は当然ありません。だから看護や介護なんてできない。
マスクさえも縫うことできない。防護服を買い集める資金もない。
医療の現場に対してできることはなんにもありません。まったくの無力です。
 
そんな無力でも唯一できることがあります。
 
それはもう、医療の邪魔をしないこと。ただそれだけ。
 
 
感染だけに限らず、交通事故に遭わない。海や川で溺れたりしない。山に登って足をくじいたりしない。不慮の事故で救急車や病院の世話にならない。
 
最前線で戦っている医療の邪魔をしない。
無力な者ができるのは、ただそれだけです。