「今度アルバムを出すんだ。ジャケットの絵を描いてくれないか」
男は友人から頼まれデモテープを聴いた。
男は繰り返しデモテープを聴いた。
聴きながら、男は自分の顔が、細かく、時に激しく反応するのを感じた。
なんなんだこの曲は。
こんな曲、聴いたことがない!
俺は今どんな顔になっている?
男は鏡を見た。
そしてそれを、そのまま絵にした。
男の名はバリー・ゴッドバー。
アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」は1969年にリリースされた。
しかし、バリーの絵はそれ一作だけだった。
翌1970年、バリーは24歳の若さで、命を落とした。
それから50年後の2020年、世界の多くの人が、バリーの絵のような顔で、綿棒を鼻から受け入れていた。
ああ、ぞっとする。鼻から綿棒だなんて、想像するだけでぞっとする。