代わりなんかいくらだっている!んだろうな、の特別な夏。

修学旅行を予定している中学校で、旅行直前に生徒や教員が新型コロナに感染したら旅行そのものを中止にする可能性があると、保護者に通知していた。しかも中止により発生した旅行代金(企画料)は各保護者負担にする、というらしい。

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この新聞記事を読んで、なんともぞくっとしてしまった。起こるであろうマイナス面しか思い浮かばない。
 
 
隠していたって学校という小さな組織では誰が感染したか<犯人!>は、すぐに分かってしまう。
 
ちょっと調子が変だぞとなっても、<もしかしたら>で言い出せない。
 
<あいつのせいで修学旅行が中止になった>と、負の烙印が一生つきまといかねない。
 
生徒や教員以外、その家族も、自分が感染源になってしまったらと、ストレスはたまったもんじゃない。
 
なかには修学旅行なんか行きたくない!と故意に感染したり、ターゲットを見つけて感染リスクに晒すという陰湿な手口を考え出す奴だっているかもしれない。
 
 
 
この新聞記事には、「1人でも感染したら修学旅行は中止だぞ」と担任に念押しされて旅行に出発した、学校の生徒の話も載っていた。
 
その生徒はこう語っている。
 
「みんなに迷惑をかけられない。自分が感染したらと思うとすごく怖かった」
 
こんなことを子どもたちに言わせてしまう、言わざるを得なくなるってなんだか悲しい。
 
 
学校の会議の席で、どういう話し合いをしてこの結論になったか知りませんが、参加者のなかには、起こりうるマイナス面を訴える人もいただろうと想像します。
 
それでも、声の大きな人の<連帯責任!><自己責任!><代案を出せ!>の声が勝ってしまったのか。
話し合うべきは、感染した子や教員を守り、安心して治療に専念させる環境づくりなのに、子どもたちに責任を強いるなよ、と思う。
 
 
 
 
 
最近は落ち着いてきたとはいうものの、新型コロナウイルスは誰だって感染する可能性がある。
どこに<奴ら>は潜んでいるかわからないから用心にこしたことはなく、自分だっていつ感染してしまうかわからない。
 
 
そんななかふと思う。
 
 
 
自分が演出する撮影や編集などがせまっているなか、もしも新型コロナに感染したら、と。
 
罹ってしまった当人は入院か隔離かしか道はないのだけど、こんな自分を起用してくれたプロデューサやプロダクションやエージェンシーは、そんな時、どうするんだろう。その仕事をどう進めていくんだろう。
起用した当人が復帰するまで待つのか。待つことが許される仕事なのか。
 
 
納期が迫っていたら、当然代役となる。
自分はローカルで広告映像の企画演出をしている。
ローカルの世界で、自分は唯一無二の演出家ではないことは十分承知している。おそらく代替可能な演出家だと思う。
納期を優先させ、即座に別の演出家がキャスティングされるだろうと想像する。
 
 
withコロナの時代は、そんな可能性をシミュレートしながらキャスティングを考える時代なのかもしれない。
その時になったら考える、ではなく、事前に念頭に抱いておくべき時代なのかもしれない。
 
 
そして同時に、演出家が現場に立てなくなっても容易に現場を進行できるよう事前の打ち合わせ綿密に固めておく必要がある。
 
なにをどう撮る、だれをどう動かす、編集のイメージはこんなだ、音楽は…ナレーションのトーンは…撮影前に演出家が抱いているイメージをスタッフ全員がいままで以上に共有すべきとなってくる。
なーんとなく、なんてものじゃなく、かなり具体的に。
 
 
 
 
新型コロナウイルスは、自分の存在価値を突きつけてくる。
 
 
 
結果的に<この人>で良かった、はあるけれど、絶対的にはじめから<この人!>というプロジェクトて、少なくとも自分の営みの場では数少ない。
 
 
新型コロナウイルスという感染症によって、残酷な現実が目の前に突きつけられてしまった。
 
 
 
 
追記:冒頭の修学旅行のキャンセル料は保護者負担から公費負担へと変わった、という記事が後追いで出ている。
保護者の負担がなくなったからOK,なんてものではなく、、密かに行われるであろう<犯人探し>への対応がなにも言及されていない。問題はそこ、そこを何とかすることじゃないのかな。

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