時間と距離を軽々と飛び越えたリンダ・リンダズの時代を変えるシャウトをお聴きくださいの巻

NETFLIXで配信されている映画に「モキシー 私たちのムーブメント」というのがあります。
性差別や女性蔑視が根深い高校で、それらをなんとかしようと女子生徒たちが団結して立ち上がり、小さな革命を起こしていく映画です。シンプルなそのつくりが好きで、何回か観たりしています。

 

 
この「モキシー」のなかに、高校の中等部(という設定)のガールズバンドが出てきます。
 
バンドの名は、「リンダ・リンダズ The Linda Lindas」
 
実際にロサンゼルスで活動しているガールズバンドで、10歳から16歳の、アジア系とラテン系のアメリカ人で結成されています。
 
 
で、この「リンダ・リンダズ」が今年2021年の5月、ロサンゼルスの公立図書館でネットライブを行いました。
演奏したなかに「レイシスト、セクシスト・ボーイ(人種差別的で、性差別的な男子)」という曲があります。
 
 
演奏を始める前に、ドラムス担当のミラが、この曲の誕生について語っています。
 
 
「ロックダウンがはじまるちょっと前に、クラスの男子が私のところに来て、『お父さんに中国人には近づくなって言われた』と言った。それで『私は中国人だけど』と言ったら、その子は私から遠ざかった。そんな経験をしたことを元にこの曲を書いた」
 
そしてヴォーカルも、
「これは、その子と、この世界にいるすべての人種差別的で、性差別的な男子についての曲です」
と告げ、演奏をはじめます。
 
 
one,two,three,four!のカウントのあと唸りだすギターとベースの響き。
ヴォーカルのけして大きな、とは言えない(むしろ小さい)体の奥底から噴き出してくる叫び。
もうその瞬間から目が離せなくなってしまいます。実にカッコよく、潔く、パワフルで、そしてなにより楽しそう。
 
 
 
メンバーはこうも言っている。
 
「この曲は、実際に起きた体験を共有して学んでもらおうとするもので、その人の知性を理由に傷つけようとするものではありません」
「ゴールは、この世界をよりよい場所にすることです」
 
このメッセージも、カッコ良すぎます。
 
 
 
 
「リンダ・リンダズ」というバンド名は、ブルーハーツの、というよりも、その曲を題材とした山下敦弘監督の2005年の映画「リンダリンダリンダ」から付けられたようです。
(主演は、知る人ぞ知る、あのペ・ドゥナ。韓国からの留学生役です)
 
 
日本のブルーハーツというバンドの曲を題材とした、
韓国人がヴォーカルの高校生ガールズバンドを描いた日本映画を、
公開から何年か経った後で見た
ロサンゼルスに住むアジア系とラテン系の10代の少女たちがバンドを組んで、
バンド名なんにする?ってなった時、
あ、そうだあの映画、リンダリンダにしよう
わたしたちのなかにリンダって名前の子誰もいないけどねハハハハいいじゃんそれ、
と身近な問題や疑問やなんやらをストレートに思うがままに歌いだしたら、
たまたまLIVEを見に来ていた映画監督の目にとまって、
今度私が作る映画に出て、
ってなって「モキシー」という映画に出ることになって、
さらにはロサンゼルスの公立図書館から世界に向けて、
コロナ禍で体験した人種差別的な経験を歌うことになって、
そんなこんなしてたら、
「モキシー」という映画が大好きな、
日本の、
愛知県の片隅のオッサンが、
映画に出てくるリンダリンダズってカッコいいなぁなんだこれって検索して、
そしたらそのパワーにやられちゃって、
こりゃ自分ひとりだけじゃなくってたくさんの人にも知ってもらわなくちゃ、
と、
今、
こういう状態になっている。
 
 
 
いともかんたんに距離とか時間とかを飛び越えちゃってるこの展開にスゴイなぁと思ってしまうけれど、彼女たちにしてみたら、は?なに?なんのこと?そんなの当たり前でわざわざ言うことでもないでしょ、なのだと思う。
 
家にいてスイッチひとつクリックひとつで、世界中の、文化や言葉や背景の異なる、過去から現在までのコンテンツがすぐ触れられるそんな環境に浸ってきた世代にしてみたら、距離や時間は、なんも障害や抵抗を感じることなくひょいと飛び越えられちゃう地面に描かれた白線みたいなものなんだろうな。
もうそこはいつだって青信号
 
映画「モキシー」でのリンダリンダズの登場シーン。