どうやら2021年は「愛の不時着」にはじまり「岸辺露伴」で終わる一年になりそうです。
本年度167本中の順不同お気に入りランキングでございます(新作というわけでなく、旧作・再見も含まれています)
【圧倒的に韓国が多かった】
<韓国・やはり役者は肉体がもノをいう>
◯「The Witch 魔女」〜AKIRAを彷彿とさせる設定と展開。ラスト研究所での死闘は目が離せない。
<韓国・歴史に向き合う姿勢に感服>
<韓国・泣く、とにかく泣く>
◯「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん」〜私史上最高のドラマ。最初の数話で離脱してはいけない。最終回は涙なしでは見られない。
◯「賢い医師生活」〜ドラマを見る、という感覚ではなく、毎回登場人物たちに会いに行き、その心の優しさと友情と命に向き合う姿勢に触れる物語。構成がすばらしい。
<韓国・イ・チャンドン監督作品>
◯「ペパーミントキャンデイ」「オアシス」「バーニング」〜強烈なテーマと演技と痛みにしばし茫然となってしまう。心に余裕がある時に見ることをおすすめします。
<韓国・ホン・サンス監督作品>
振り返れば、あのときは正しく今は間違い、がいっぱい溢れていることに気づく。人間は反省と修正ができない生物なんだなぁと。
<話題になってハマりはしたけど>
◯「愛の不時着」「梨泰院クラス」〜確かにおもしろく次から次へと夢中になっては見たが、一度見ればいいかな、って今は見返そうとは思わない。
<もうかなわない>
【見るたびに深まる名作感】
◯「クィーンズ・ギャンビット」〜何十回と出てくる、ただ向き合うだけのチェスの対決も、そのすべての撮影と演出が異なるという、全てにおいて完璧なドラマ。
◯「20センチュリーウーマン」〜人は人と互いに影響しあいながら生きていく。成長していく。あらゆる世代、あらゆる性別、あらゆる立場に送る名作。時をおいて何度も見たい。
◯「モキシー私たちのムーブメント」〜どこの組織にもあるマチズモ(男性優位主義)にうんざりしている貴女に。痛快です。
◯「A GHOST STORY」〜不思議なリズムで歩き出し、いつのまにか歴史と果てへと思いが馳せられてしまう、深淵な世界。
*同じ監督(デヴィット・ローリー)の「さらば愛しきアウトロー」はロバート・レッドフォードの引退作で、実にシブい。
◯「パターソン」〜日本では<ポエム>というと、意味不明な発言や壮大なほら話と笑われがちだけど、それは<詩>に失礼だ。ラストの永瀬正敏には驚いた。
【テレビドラマ】
◯「お耳に合いましたら」〜大好きなチェンメシ(チェーン店のグルメ)を毎回ポッドキャストで発信する、ほんわかドラマだと思ったら大間違い。好きなことを隠さず表に出そう、社会人になっても友達はできる、という極めて王道な前向きドラマなのだ。
◯「大豆田とわ子と三人の元夫」〜感覚のアップデートを怠らない坂元裕二は、盤石のおもしろさで見事です。
◯「今ここにある危機とぼくの好感度について」〜一年延期が決まった東京オリパラの年にこの放送とは。<最大の悲劇は悪人の暴挙ではなく。善人の沈黙である>。優れた作品は時代とともにある。
◯「雨の日」〜地味でさらっと一回オンエアで忘れ去られてしまっていますが、生理についてここまで真正面に向き合うなんて。それでいて清々しい。
【配信がなかったら出会わなかった国の映画】
◯「ザ・ホワイト・タイガー」(インド)〜「パラサイト半地下の家族」のインド版。<これからは白人ではなく、茶色と黄色の時代だ>と叫ぶ、彼らの言う黄色の中に既に日本はない、という現実。
【アニメも友だち】
◯「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」〜戦闘兵器と育てられた心なき少女が手紙を通じて心を取り戻していく、その過程に涙。
◯「ODD TAXI」〜ほんわかアニメだと思っていたら第1話から不穏な世界に巻き込まれていく。いったいどこへ向かおうとしているんだ。ラストの世界観の開示には驚きました。
◯「映像研には気をつけろ」〜第7話の、お茶の残りを庭へ捨てるとき現れる放物線の美しさと、人が椅子から立ち上がる動作の解析の表現には惹き込まれました。クリエイティブなこだわりとビジネスの両立を女子高校生から教えられます。プロデューサ必見!
【知ってるつもりで知らなかった】
さて、167本と、数だけ見たら例年より圧倒的に多いのは、間違いなくネットフリックスとアマゾンプライムのおかげです。
映画館とレンタルビデオしかなかった時代に比べると、けっして映画館に足を運ぶことなく、レンタルにも手を出さないであろう国や小粒や作品にも多く出会えました。そして気になれば何度だって繰り返し観ることだってできます。
二度三度繰り返し観ることで、毎回視点を変えて接することができ、一回だけでは見過ごした細部やメタファーの意味するところに気づくことができます。
配信時代に生きる表現者予備群の将来が楽しみです。
さて、おそらく来年は、まだ見ていないけれど、「ドライブ・マイ・カー」が海外でいくつかの賞を獲るであろうことが囁かれています。
その濱口竜介監督の2013年作「不気味なものの肌に触れる」が31日まで無料配信中です。
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