スマホで消しただけなのに

深夜のガストで漏れ聞こえてくる”消しゴムマジックは便利だわ〜”てな三人の会話を聞いていたら自分がまるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の写真の姿が消えていくお兄さんの気分になってしまったという話
 
 

 

 

 

 
なっち「消しゴムマジックてすっごいね」
みーぽん「ホント。すっかり消えてる」
なっち「思い出はやり直せるんだ」
あーちん「でも消された方のこと考えるとさ」
なっち「いやいややっぱ思い出は美しくなくっちゃ」
みーぽん「言わなきゃいいのよ」
なっち「そう。知らなきゃみんな幸せ」
あーちん「わたしはヤダな」
みーぽん「あれと一緒よ。ほら、賞味期限過ぎても知らなきゃ平気、みたいな」
あーちん「わたし賞味期限ちゃんと確かめるから」
みーぽん「はいはい、あーちんカンペキ。人生何周目?」
なっち「あ、すごいこと思いついた」
みーぽん「なに」
なっち「マンガ家になろうかな」
あーちん「はぁ」
なっち「デスノートみたいにさ」
みーぽん「あ!」
なっち「スマホで消しただけなのに現実のその人も消えちゃうとかぁ〜」
みーぽん「おお、デススマホ!」
なっち「デスマホ!」
みーぽん「スマホデス!」
なっち・みーぽん「はははは」
あーちん「それ笑える?」
みーぽん「あれだね」
なっち「どれ?」
みーぽん「消しゴムマジックは映え的に邪魔だから消すんだけどさ」
あーちん「だけど?」
みーぽん「例えばもう顔も見たくない毒親とか」
なっち「うん」
みーぽん「邪魔でしかない子どもとか、にも?」
なっち「それヤバい」
みーぽん「DVの代替行為にしちゃう人もいたりして」
あーちん「ひどすぎる、信じられない」
なっち「たとえばの話よ」
あーちん「そんなんぜったいダメ」
なっち「てことはさ」
みーぽん「うん?」
なっち「100年後とかに、あのとき確かにいたはずの人の証拠が、さ」
みーぽん「残ってない。ひとつも」」
なっち・みーぽん「こわーい」
なっち「あんたが生きてた証拠はありません」
みーぽん「ほら写真が残ってません、て」
あーちん「逆に自分がそうなる可能性だってあるのよ」
みーぽん「消されるようなことしなきゃいいわけでしょ」
あーちん「そうやって考えるだけで来世はオオアリクイにされるのよ」
みーぽん「されるってあーちん、されたみたいに」
なっち「されたの?」
あーちん「もういい。ドリンクバー行ってくる(と、席を立つ)」
みーぽん「(見送って)あーちんさ、最近いい子ぶってウザくない」
なっち「たしかに」
みーぽん「(スマホを取って)消しちゃう?」
なっち「ちゃう?」
みーぽん「あんがい真っ先に消されちゃうのって」
なっち「うん、嫌われもんじゃないかも」
みーぽん「ねえ、わたし消さないでよ」
なっち「だいじょうぶ、あんた嫌われもんだから」
みーぽん「来世はオオアリクイ?」
なっち「インド太平洋のニジョウサバだったりして」
みーぽん「なにそれ、しらない」