室町時代のペテルギウスを眺める平成の恋人たちよ
ハフィントンポストにこんな見出しの記事を見つけました。
記事によると、15〜30メートルほどの小惑星が、地球から4万2000キロ未満の距離を通過する(した)らしい。
4万2000キロ=(イコール)異常接近、というのがよく分からない。
この距離は、宇宙的(?)天文学的(?)には「異常」と騒ぐほど危険な距離なのだろうか。
そもそも4万2000キロ離れたところってどこだ?
それは地球と月の8分の1に当たるらしく、それでもそこは「めっちゃ遠いところ」で、そんなところでも異常なの?
わからない。
宇宙における距離感がまったくわからない。
4万2000キロも離れていたら体感的に危険を感じることなどありもせず、なんか桶狭間の交差点で、「ここで昔、合戦があったんだなぁ」と感じ入るほうが実感が深い気がしてしまいます。
この記事で、おい、それホントに正しいのか?と疑ってしまった理由はもうひとつあります。
見出しにあるこれ、
「家一軒」
「家一軒」て、それ誰の家を基準にしてるの。
年収いくらの人の家?築何年?平屋?3階建て?日本の?外国の?
家一軒といわれてまず思い浮かぶのは自分ちで、狭小住宅に住んでる人はちっちゃい惑星だなぁで、豪邸に住んでる人はでっかい惑星だなぁと、人それぞれで家それぞれ。
しかも大きさ以前に、頭に浮かんだのは、宇宙空間にぽっかり木造住宅が漂っているビジュアルですから、例えとして首を傾げてしまいます。
宇宙の距離感でまた厄介なのはそこに時間が加わってくるからです。
光の速度、光年というやつで、光は一年間に9兆4600億キロメートル進むそうです。
9兆4600億キロメートル!
根っからの文系にとって光年という単位はまったくもって、雲どころか大気圏を突き抜けてペテルギウスをつかむような話です。
ペテルギウスとはご存知、オリオン座の三つ星の左上に輝く星。
最近読んだ伊坂幸太郎の「ホワイトラビット」にオリオン座の話が出てきました。
ペテルギウスは、地球から640光年離れた距離にあります。一光年が9兆4600億キロメートルですから、えーとえーと、いったいそこはどこなんだ?!数字に弱い自分はもうすでにくらくらです。
さあ、よろしいですか、640光年離れているということは、今この2017年に見えているペテルギウスは、640年前のペテルギウスということになるのですよ。
冬の夜、肩を寄せ合う恋人たちの声が聴こえてきます。
「ほらごらん、あれがオリオン座だよ、キレイだね」
いいかキミたち恋人たちよ、そのペテルギウスは室町時代のペテルギウスなんだよ、知ってるかい。
室町の世から遥か640年の時をこえ、平成の恋人たちを照らすペテルギウス。まあ、ロマンチックなこと。
ところが!
このペテルギウスはいつ爆発してもおかしくはなく、いや、ひょっとしたらもう爆発しているかも知れず、ただあまりにも離れすぎているからまだその兆候が地球に届いていないだけ、だったりもして、というのがあるから恐ろしい。
例えば600年前に爆発していたら、あと40年後に地球に大影響が及ぼされるということとなるというのです。
「あのペルギウスのように僕たちの愛も永遠に輝かせよう」と囁くカレ。
しかし隣りのカノジョの恋心は、居酒屋の水割りのようにすっかり薄れていて「ごめんなさい。3ヶ月前からもう気がないの」と告げられる。
えー全然気づかなかった!と爆発してしまうのはカレの心です。
こういう状態を「ペテルギウスショック」といいます(ウソ)
そして、そんな失意に落ち込む者を慰めるときの定番の言葉が、
「そんな悩みなんて、宇宙の壮大さに比べたらうんぬんかんぬん」なわけで、やっぱり宇宙って偉大だね。
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