平成最後の冬に吹いたやわらかで優しい風を「令和」へも

冬は嫌いです。寒いから。
でも冬の、冬なのになんだか今日はちょっと暖かいぞ、という日があります。
そんな冬の日、
いつものようにマフラーやストールを巻いて家を出たけれど、
(要らないかも)と外し、バッグの持ち手に
マフラー(ストール)を通して歩く女性を、ときおり見かけます。
 
そんな彼女たちが、
横断歩道を小走りで渡ろうとする時、
ヒールを響かせ颯爽と階段をのぼる時
人混みのなか行き交う誰かとすれ違う時、
やわらかな風がふいとマフラー(ストール)を外し落としてしまうことがあります。
 
音もなく、なので、気づかず彼女たちは走り去ろうとします。
 
でも、必ず誰かが教えてくれます。
 
「落としましたよ」
 
その誰かは、ときに拾ったあと、ぱっぱっと軽く埃を払うような仕草をしてから手渡したりもします。
 
 
初春令月、気淑風和 
初春の令月にして、気淑く風和らぎ
 
 
落としちゃうかも、と心配するマフラーはとっくにいらない春。
なんか大晦日のような平成最後の日です。