【戦争が廊下の奥に立ってゐた】
白泉はとりたてて強い反戦思想を持っていたわけでもなく、ふつうに文学を愛する若者でした。
忍び寄る危機感を自分に与えられた表現で純粋に言い表しただけだったのでしょう。
この句が発表された80年後の2019年9月、毎日新聞の毎日歌壇という短歌投稿欄でこんな首が選ばれました。
【戦争が廊下の奥に座ってて名古屋市長が撤去させてた】
渡辺白泉の本歌取りです。
この短歌は、比喩と事実を織り交ぜているため、立場によってどう読み取るのかが非常に難しい。
撤去させてくれて良かったよくやった。
なのか。
それとも、
無かったコトにしちゃうの、なんで?
なのか。
この三十一文字だけでは判断できません。
このように人によって、立場によって、考え方によって、いろいろな解釈があるのは当然で、それぞれの立場で考え、それぞれの立場を認め合う、そんな舞台があることが大切なような気もします。
80年以上経って、もうそこにはいないはずなのに、廊下の奥にそれに似た気配を感じさせてしまうような、「旅館アポリア」という作品はそんな強い力を持っています。
あいちトリエンナーレはあと2週間余り。
「旅館アポリア」をはじめ、興味深い作品がたくさんあります。
毎日いろいろがあって、いつどうなるかわからない状況なので、お早めに鑑賞あれ。
とりあえず、まずは、そこから。
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「旅館アポリア」レビュー(9月24日)です。