あの時なにもしなかったからせめて知るだけでもと、「アリガト謝謝」

2011年4月109億円。2011年5月上旬160億円。そして最終的には200億円を突破。
東日本大震災に対する、台湾から日本への義捐金です。
世界最大の金額だったにも関わらず、世界6カ国7紙に掲載した、感謝を表す日本政府のメッセージ広告は台湾には行われませんでした。
 
それを知った日本のある広告デザイナーは疑問を感じます。
「なぜ台湾が入っていないの」
 
彼女は、じゃあ台湾の新聞に感謝広告を出そう、と思いたち、『謝謝台湾計画』なるものを1人ではじめます。
今だったらクラウドファンディングとなるのでしょうが、当時はまだそれほど?だったのか、Twitterとブログで賛同者を募り、最終的に1900万円もの寄付を集めました。
そして2011年5月に、台湾の主要2紙に「ありがとう、台湾」の広告を掲載させたのです。
 
当時、なーんとなくこの出来事は知っていました。でも、日本にとって複雑な事情のある場所だからか、テレビや新聞ではこのことをあまり報道していなかった記憶があります。触れたニュースや記事はネット上のものだったような気もしています。
 
で、この出来事をベースとした小説が出版されました。フィクションとしていますが、基本は事実でしょう。
 
アリガト謝謝

アリガト謝謝

 

 

なかのセリフにこんなのがあります。
「(政府の事情)とはまったく関係のない人の愛とか心とか、こういうものって理屈じゃないと思うんですよね。だからこそ思いがけない大きな力になったりもするんだと思います」
 
3章構成になっていて、第2章は台湾の様々な地域、人、団体が募金をはじめていく様子が描かれています。取材に基づいたフィクションでしょうが、台湾の方々の日本に対する思いにちょっとウルッときてしまいました。
 
2011年に募金も活動もなにもしなかった男の、おすすめの一冊です。